監督湯浅政明インタビュー[前編]

[前編]やれると思ったことは、やれる

“人魚が少年の心を解放する物語-言い訳なしで「好き」と言っていいはずなのに。”

―― 『夜明け告げるルーのうた』は原作のないオリジナルストーリーです。物語の主軸になっている「14歳の少年による心の解放劇」は、湯浅監督が長らく描きたかったテーマなのでしょうか。

―― 多くの人が好むものでないと、「好き」と公言できない空気があると。

―― 作った音楽を匿名でしか発表できない主人公の少年・カイの気質は、それを表しているんですね。

―― “外野”とは、本作の舞台である漁港の町・日無町(ひなしちょう)の多くの住人たちでもありますね。閉鎖的な町を象徴する存在というか。

“僕のは流行を追った絵柄じゃない。「見づらい」と言われる(笑)。”

―― そんな青春物語を彩るのは、湯浅作品にしては少々意外な、かわいらしいキャラクターたちです。

―― 湯浅監督から見た、ねむさんの絵の魅力は。

―― ルーのパパがスーツを着ている。

湯浅 パパはサメのような姿形をしているのですが、れっきとした人魚で、昔から人間の様子も見ていて、合わせる才覚もルーよりあるという設定です。ただ、昔々は彼も人間を含めていろんなものを捕食していて、人間とは仲良くなれないとも思っているのですが、娘のルーが人間と仲良くしたがっているのを見て、自分も人間を食べずに人の生活スタイルに合わせています。けれども、どこかふざけてしまうので、問題を大きくしてしまう感じです(笑)。彼が子供のために人間を食べないのは、人間が子供のためにタバコを我慢する事と同じくらいの感覚かもしれません。

“本物の中学生が醸すリアリティ―「とにかく叫んでくれ!」”

―― ルーとルーのパパの声には、谷花音さんと篠原信一さんがキャスティングされています。

―― 篠原信一さんの本業は柔道家ですが……。

―― カイ役の下田翔大さんは、カイと同じ中学生(アフレコ時14歳)ですね。

―― カイによる『歌うたいのバラッド』歌唱シーンですね。

インタビュー・構成:稲田豊史

[後編]滑らかで美しいアニメーション